学校保険と耳鼻科健診
学校保健について
みなさんは「学校保健」というと何を思い浮かべますか。 新学期に行われる健康診断や保健室の先生などが考えられるかもしれませんね。 実は、少し難しくいうと、法律では《 学校保健とは学校における保健教育および保健管理をいう。保健教育と保健管理の活動を適切に行うことによって、児童生徒や教職員の健康を保持増進し、心身共に健康な国民の育成を図るという教育目標の達成に寄与することを目指して行われる活動 》とうたってあります。
簡単にいうと、校医の先生を始め養護の先生や栄養士、薬剤師、教員が協力して児童の健康管理や環境衛生を整え、健康教育を行っていくということでしょうか。
実際には、学校健診( 内科 耳鼻科 眼科 歯科 )や、飲料水やプールの水質検査、日々の健康観察などが行われています。また各学校では、学校保健会を開催し児童の健康について話し合ったり、講師を招いて講演会が催されているところもあります。 最近のテーマとしては、現代の子供を取り巻く諸問題として、生活習慣の乱れ、生活習慣病、心の問題、不登校、アレルギー疾患、喫煙、飲酒、薬物乱用、食生活の乱れ、肥満の増加、感染症、性の問題や性感染症、歯周病の増加 などが取り上げられることが多いようです。特に、耳鼻科に関しては、アレルギーの増加や睡眠時無呼吸症候群 などが話題になることが多いようです。
みなさんのお近くには必ず校医さんがおります。病気ではなくても、心配事や相談したいことがありましたら気軽にお声をかけてみてください。 わたしたち校医も、地域に根ざすべく日々努力しております。
学校保健と耳鼻咽喉科健診
耳鼻咽喉科領域には、人間生活に欠かせないコミュニケーション(聴覚⇒音声・言語)、呼吸、摂食、匂い(嗅覚)、味(味覚)などを司る大切な器官、機能があります。また姿勢・運動反射である平衡機能は体力、運動能力の向上、身体の安全と深い関係があります。そのために、耳鼻咽喉科領域は学校保健の中で重要な部分を占めています。
以下に、静岡県内の耳鼻咽喉科健診の時に使用している「耳鼻咽喉科健康診断結果のお知らせ」の所見名の内容と説明をいたします。
- 耳垢栓塞 (耳あか):鼓膜が見えない程度にたまっています。鼓膜が見えないため、中耳炎などの病気が隠れていること もあります。
- 滲出性中耳炎:鼓膜の内側(鼓室)に水がたまって、聞こえが悪くなる病気です。痛みがないので本人が気付かないうちに進行します。日常会話や学校生活に差し支えることがあります。
- 慢性中耳炎:炎症を繰り返し、鼓膜に穴(穿孔)があいています。耳だれが続いたり、聞こえが悪くなったりします。 放置すると難聴が進行するおそれもあります。
- 難聴の疑い:学校での聞こえの検査で、はっきり聞き取れないところ(〇印)がありました。 [右耳] 1000Hz/30dB ・ 4000Hz/25dB [左耳] 1000Hz/30dB ・ 4000Hz/25dB
- アレルギー性鼻炎:原因となる物質(アレルゲン)を吸入すると発症する病気で、くしゃみ・鼻水・鼻づまりの3症状を訴えます。慢性的な鼻づまりは集中力の低下など学校生活にも影響し、しばしば鼻出血の原因にもなります。アレルゲンにはホコリ・ダニ・花粉などがあります。
- 副鼻腔炎:慢性的に粘性・膿性鼻汁があり、鼻づまりや嗅覚障害・鼻出血・頭痛・痰がらみの咳など、いろいろな症状の原因となります。
- 慢性鼻炎:慢性的な鼻づまりや鼻汁過多があり集中力の低下など学校生活に影響を及ぼすと思われます。学校の健康診断だけでは花粉症などのアレルギー性鼻炎や副鼻腔炎と診断できないものも含まれます。治療が必要な場合もあります。
- 鼻中隔わん曲症:鼻の左右の空間を仕切る壁(鼻中隔)が強く曲がっているため、鼻づまりや鼻出血の原因となることがあります。
- アデノイド増殖症の疑い:アデノイドは鼻の一番奥にある扁桃組織で、増殖症では口を開けて呼吸をしていたり、「いびき」などの睡眠時呼吸障害、中耳炎や副鼻腔炎を起こしやすくなったりします。
- 扁桃肥大:扁桃がはれています。大きくても心配のないものもありますが、呼吸や嚥下の障害(飲み込みにくい)を来す場合があります。
- 扁桃炎:かぜをひきやすく、のどを痛めやすい原因となります。繰り返し高い熱を出す習慣性扁桃炎や関節・ 腎臓・心臓の病気の原因になる病巣感染源となることがあります。
- 音声異常:長期にわたる声がれや鼻声などの異常があります。小学校高学年以上になると「声変わり」がうまくできないことも原因となります。
- 言語異常:話し言葉に異常があります。程度によっては専門機関での治療が必要になります。