for Treatment in School
学校における耳鼻咽喉科疾患の対応と処置
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会学校保健委員会発行
学校現場で適切な耳鼻咽喉科救急対応を図るため、現場で対応される養護教諭や学校関係者を対象にしたマニュアルです。マニュアルに記載されている応急処置を抜粋いたしましたので、日常の学校生活や教育指導にご使用ください。
さらに詳しい原因、対応等に関してはPDFファイルを直接開いて参考にしてください。
マニュアルを開く(PDF)
【応急処置】
Ⅰ 耳
1) 耳痛
①耳漏、耳出血がある場合、外耳道の外へ流れ出た漿液、粘膜液、血液のみを清潔な綿棒、カット綿で清拭する。外耳道の中や奥は清拭せず医療機関に委ねる。
②耳介や耳周囲に発疹や熱感がある場合は冷湿布をする。
2) 耳漏
外耳道からの流出液は清潔な綿棒、綿花、ガーゼ等で清拭する。ただし、外耳道の中や奥は清拭せず医療機関に委ねる。
3) 突然の難聴、あるいは聴力の変化を訴えた場合
①難聴に対して:学校現場では特にない。
②めまいに対して:一般に動くとめまいが誘発され、増強することが多いので、楽な姿勢で安静にさせる(めまいの項参照)。
4) めまい
①本人の楽な姿勢・体位で安静にさせる、あるいはめまいを誘発しない姿勢・体位があれば、それをとらせる。
②嘔気・嘔吐に対して
嘔吐する場合は、側臥位など嘔吐しやすい体位で吐かせる。頭や身体を動かすとめまいが起きて嘔気・嘔吐が生じることが多いので、安静が大事である。
③失神について
いわゆる"めまい"と異なるが、前駆症状として訴えることがある。
長時間立っている時に生ずる失神は起立性低血圧によるものである。また、不安や恐怖、激しい驚きや怒りのような感情的ストレス、痛みなどが引き金になって、顔面蒼白、発汗、めまい、嘔気などの前駆症状を伴って失神する(血管迷走神経性失神)ことがある。いずれも、仰臥位をとらせ、衣服を緩め、下肢を心臓よりも高くすると数分以内に自然に回復する。
失神の場合は、心肺蘇生を必要とする状態か判断する必要があるが、その方法と対応については専門書に譲る。
Ⅱ 鼻
鼻出血
① 両鼻翼(小鼻)を親指と人差し指でしっかりつまんで左右から鼻中隔を圧迫する。圧迫する際に、出血皮の鼻の入り口から約1cm入ったところに、小指の太さに固めた脱脂綿やタバコ状に巻いたティッシュペーパーを詰めて押さえてもよいが、鼻内奥に入り取れなくなることがあるため、詰めるものは一個のみとする。
② 体の位置は座った姿勢にし、のどに回った血液は飲み込まないで外に出すようにする。血液がのどに流れて咳き込んだり、飲み込んで気持ちが悪くなり吐いてしまうこともあるので顔はやや下向きにする。
③ 以上のような処置をしても出血が止まらないようなら、鼻の奥からの出血や全身性疾患等が原因の可能性があるので耳鼻咽喉科を受診させる。
Ⅲ 咽頭・喉頭と頸部の損傷
1) 喉頭・気管外傷
①呼吸障害がある場合、可能なら気道確保を行い、救急受診させる。
②呼吸障害がない場合、頸部の打撲痕、頸部変形、嗄声、嚥下障害があれば速やかに医療機関を受診させる。前述のような所見・症状がなくても、後になって喉頭浮腫が出現し、呼吸困難に至ることもあるので、早期の医療機関受診を勧める。
2) 口腔・咽頭外傷
①呼吸障害がある場合、可能なら気道確保を行い、救急受診させる。出血量が多いと気道確保が困難な場合もあり、早急に救急車を要請する。
②呼吸障害がない場合
口腔内の外傷については、Ⅳ。顔面外傷の3)を参照
Ⅳ 顔面外傷
顔面にけがを負ったときは、けがの程度に関係なく医療機関を受診させる。
1)頭部に外傷がある場合、または意識障害がある場合 →
脳神経外科などによる救命処置が優先される。むやみに頭を動かさずに安静を保ち、直ちに救急車を要請する。
2)頭部に外傷がなく、意識障害がない場合 →
①冷却・圧迫・止血などの救急処置を施した後に医療機関を受診させる。
②出血の少ない擦り傷などで受傷部位の腫れが軽度であれば、患部を水道水で洗ってからガーゼなどで傷を保護する。
③打撲で受傷部位の腫れが軽度であれば、患部を安静に保ちながら冷却処置する。
④鼻や口腔内からの出血を伴う場合、出血部位が明らかなときは、ガーゼやタオルなどで圧迫止血の応急処置を行いながら医療機関を受診させる。
⑤裂傷に対しては傷口を水道水で応急的に洗い、ガーゼなどで圧迫止血して速やかに専門医療機関を受診させる。
Ⅴ 異物症
学校給食による誤嚥・窒息の対応
まず咳き込ませてみた後、呼吸状態が安定しているようであれば同日中に速やかに専門医療機関を受診させる。
咳き込みが止まり、呼吸困難を伴う場合には、早急に救急車を要請し、一方で異物除去が可能なら行う。容易に異物が取り除ける場合を除き、安易に口腔をのぞいたり、指をいれて異物を探したりしない。
異物除去法としては、腹部突き上げ法(ハイムリック法)を優先させ、それができない場合、背部叩打(こうだ)法を行う。方法の詳細に関しては日頃から学校医の指導を受けておく。